「双子……だから?」

「晴人くんは、アンタと同じ遺伝子のニオイがするから、嫌い」


もう、わけがわからなかった。

ただひとつ、わかるのは。

ヒナが好きな人など、この世界にいないということ。

それは、どれだけ寂しい事だろう……。


私はもう、何も言えなくなった。

ただ壊れた人形のように涙を流す私を、晴人が片腕で支えてくれた。


「満足した?こんな事したって、アンタの立場が変わるわけじゃない。明日からまた、登校拒否するの?」

「立場が変わらないかどうかは、まだわからない」


そう言って、健先輩が制服のポケットから何かを取り出した。

それを見て、ヒナが顔を歪める。

健先輩の手にあったのは、小型の集音機だった。

それは細いケーブルで、スマホに繋がっている。


「今の会話は全部、全校に聞かれたよ」


私も、知らなかった。

驚いて健先輩の顔を見たのと、ヒナが声を上げたのが同時だった。


「はははっ、会長、やっぱただ者じゃないね」

「ハッタリじゃないよ。教室に帰ったキミを見る、周りの目で判断したらいい」

「はいはい、もうどうでもいいよ」


ヒナは面白そうに笑った。


壊れてる。そう直感した。

ヒナは、多分昔から、どこか大事な部分が、壊れてたんだ……。


ひとしきり笑うと、ヒナは私を見て、口を開いた。


「バイバイ」


それだけ言うと、いつも通りの歩き方で、すたすたと屋上から出ていってしまった。



それ以来、ヒナは学校に来なかった。

実はヒナの両親の離婚が決まり、ヒナはどのみち2学期が終わったら、転校する予定だったのだと。

風の噂で聞いた。