「あぁ、あれは完全に暇つぶし。あの人もいい子ぶってて嫌いなんだよね」

「……テメェ……っ!」

「やめろ、晴人くん」


吐き捨てたヒナに噛みつこうとした晴人を、健先輩が止めた。

しかしその目は、怒りで冷たく光る。


「これ以上の話は無駄なようだな」

「そうですね。いくら聞かれても、その二人が満足するような答は、できないと思います」


ヒナは健先輩に、淡々と返事をした。

なんで、そんなに普通なの。

憎いなら、もっと罵倒してくれれば良いのに。

私を憎む事は、ヒナにとって日常の一部でしかないんだ。

そう思うと、息が苦しくなって、涙が溢れた。


友達だったのに……。

いつも、話を聞いてくれて。

いつも、励ましてくれて。

信用してた。大好きだったのに。

全部、全部、嘘だったなんて。


私は自分の事ばっかりで、ヒナに何かをしてあげようと思わなかった。

その報いが来たんだ……。


「ヒナ……ごめんね……」

「はぁ?また泣くの?二人の王子様に守られて、悲劇のヒロインにでもなったつもり?私、アンタのそういうところが、一番ムカつく」

「ヒナ……」


私の事は、しょうがない。私が悪いんだ。

だけど、ひとつだけ許せない事がある。


「なんで……晴人まで、巻き込んだの。一連の嫌がらせで、一番傷ついたの、晴人なんだよ……っ?」

「彩花……」


晴人が意外そうに目をぱちくりさせた。


「晴人は、ヒナの暇つぶしのせいで……私のせいで……っ、一番大事にしてた人を失ったんだよ!?」

「彩花、俺の事は良いから」

「私は確かにダメな子だよ。与えられる事に感謝もできなかったし、いつも自分の事ばかり考えてた。だから嫌われてもしょうがないけど、晴人は違う。晴人に謝って!謝ってよ!!」


言い切ってしまうと、ヒナはまためんどくさそうな顔をした。


「うざ……知らないよ、そんなの本人たちの問題じゃん」

「何よそれ……っ、晴人は関係なかったのに……!」

「あるよ。アンタと同罪。双子だもん」