何でこんな事になってしまったんだろう。
彩花のベッドより少し大きな俺のベッドに、二人で並んで……。
というか、彩花は完全に、俺の胸に顔を預けている。
もちろん妹だから、変な気はまったく起こらないが、自分が父親にでもなったような、不思議な気分だった。
「晴人……」
「ん?」
真っ暗な部屋に、彩花の小さな声が響いた。
「うちら、産まれる前も、こうしてたのかな」
「いや……。二卵性だから、部屋は別だろ。むしろ産まれて、集中治療室から退院してからじゃねぇか?こうしてたのは」
「晴人、意外と理屈屋だよね」
彩花は、ふっ、と苦笑した。
胸を小さな息がくすぐる。
俺達は産まれる前、母親の中に8ヶ月しか要られなかった。
普通は10ヶ月くらいだが、双子を妊娠した小柄な母親の体は、それしかもたなかったんだ。
二卵性だから、同じ体の中でも、胎児を包む膜はそれぞれ別れていた。
切迫早産になった母親から、俺達は低出生体重児として産まれた。
肺の機能が未熟だった俺達は、新生児集中治療室に入院した。
別々の保育器で、それぞれ母親の迎えを待っていた。
退院は俺の方が少し早く、呼吸障害や細菌感染を起こした彩花は、後から退院した。
今では何の問題もなく元気だが、俺達は退院してやっと、同じ布団で寄り添って眠る事ができるようになった。
まるで、今と同じように。
思春期になり、お互いに離れていたけど。
色々な困難があって、やっと、支えあうという事を知った。
やはり、この妹は、俺の半身なのだと。
寄り添って、初めてわかる。
「もう寝ろ……」
「うん……」
彩花の鼓動は安心したように、規則的に動いていた。
それを自分の体で感じ、俺もまた安心した。
しかし……。
いつまでも、このままではいられない。
いつまでも、腕の中で守るわけにはいかないんだ。
なぁ、彩花。
気が強くて、いつも俺をバカにしたお前に、戻ってくれよ……。



