「マジ?会長ひどくない?」
私の話を聞いたヒナは、飲みかけのコーラをテーブルに叩きつけた。
昨日ヒナが誘いのメールをくれたから、私は喜んで出かけてきた。
今日のデート場所は、ヒナの部屋。
のんびりできるから、と招いてくれたんだ。
わりと近所なんだけど、来たのは久しぶり。
ヒナには気兼ねなく、何でも話せてしまう。
晴人は優しいけど、里美先輩の彼氏だからなぁ。
すぐ怒って、ぶっ殺すとか言うし。
「でもさぁ。里美先輩も何かズルいよね」
ヒナはため息をついた。
「里美先輩が?」
「うん。会長といくら仲が良くても、彼女がいる人の部屋に一人で行くっていうのはどうなの」
「えっ、何で一人だと思うの?」
「そ、それは……」
ヒナはしまったという顔をして、言葉を濁した。
「ヒナ、何か知ってるの?」
「知らない知らない、何も知らない」
「知ってんじゃん!話しなさいよっ!」
完全に慌てたヒナの首をしめて脅す。
するとヒナはすぐにギブアップした。
「あんた達、本当に血繋がってんだね……すごい力」
「そんな事は良いから!」
「わかったよ……。でも、悪い話だからね?」
そう前置きしたヒナの話は、昨日の事。
晴人が里美先輩が受けたイジメを知ってしまった事。
それより衝撃的だったのは、晴人の下駄箱に入れられた写真の事だった。
「信じられない……」
健先輩と里美先輩が、同じ玄関から出てくる写真なんて。
誰かが明らかな敵意を持って何日も待ち伏せなければ、撮れる事はないだろう。
私はその犯人の執念と、正体がわからない不気味さにぞっとした。
悲しみを感じたのは、その後だった。
「それって、完全に浮気じゃない……」
「いや……わかんないけどさ……」
「健先輩もひどいけど、里美先輩もひどいよ……」
里美先輩、どうか晴人を裏切らないで……。
暗くなってしまうと、ヒナは遠慮がちに口を開いた。
「……今日、来てるんでしょ?何か動きがあるんじゃない?」