「どうしたの?」
俺の顔を見るなり、里美は眉をひそめた。
「まぁ、上がれ」
そう言うと、里美は黙って俺の後をついてくる。
部屋に入るなり、座りもせずに里美が口を開いた。
「ねぇ、どうしたの……?」
「昔の知り合いに因縁つけられて、少しもめた」
「少しって……」
非難するような視線に、腹にたまった冷たいものが熱せられていく。
なるべく冷静になろうとして、床に座った。
すると里美も、俺の横にちょこんと座る。
「そんな事より、メガネとお前と彩花だろ。一体何があったんだよ」
里美は黙ってしまう。
俺はうつむいたままの小さな頭に話しかけた。
「……お前、イジメられてんだって?」
「……!」
「他の人間に聞いた。俺のせいで、言われなくていい事言われてんだろ。それが原因か?」
里美は顔を上げた。
その表情には悲しみがあった。
やがて決心したように口を開く。
「健くんが……」
「メガネが?」
「健くんに、その事を知られて……私と晴人くんは……人前で一緒にいない方が良いと、彩ちゃんの前で言われたの」
「俺がこんなだからか」
里美は眉をひそめた。
やがて小さな声で話しだす。
「うん。私の立場を良くするために、別れたふりをしろって言われた。でも私は断ったの。何で、何も悪い事してないのに、そんな風にしなきゃいけないのかって。彩ちゃんも同じように怒ってくれて……健くんと言い合いになったの」
それが原因だったのか。
彩花が話せなかった理由がわかった。
俺を傷つけると思ったんだ。
そして、里美も、どう話せば良いか悩んだんだろう。



