ヒナはこくりとうなずく。
「……証拠がねぇな」
「……そうだけど……」
「まぁお前は、余計な事するなよ。お前まで被害にあうといけないから。じゃあな」
それだけ言って、俺はヒナを残して外に出た。
里美まで、嫌がらせを受けている……。
しかも、俺のせいで、悪く言われてるのか。
メガネの言っていたのは、この事だったのか。
そうだとすれば、確かに俺はめでたいやつだ。
ポケットの中の封筒の重みが、胸にのしかかる。
しかし、これは何なんだ。
意味がわからない。……わかりたくない。
とにかく、家に帰ろうと、無理矢理重い足を引きずって歩いていた。
「……げっ」
すると公園に、ガラの悪い奴らがたむろしているのが見える。
しまった、ぼんやりしていたら、うっかり前を通りかかってしまった。
そのまま無視して行こうとしたら。
「おいおい、武内」
と、案の定、声をかけられてしまった。
「……小沢か」
その制服には、見覚えがあった。
この前文化祭で飛び蹴り一発で倒した、小沢とその仲間達だ。
小沢以外は、緊張した面持ちで近づいてくる。
「この前は世話になったな」
「……あぁ、気にすんな。じゃあな」
「待て待て!」
しつけえな……。
何だって、こんな時に……。
「偶然会ったんだから、遊ぼうぜ!」
小沢はそう言うと、いきなり殴りかかってきた。
「っ!」
いつもはかわせる拳が、何故かボディに入ってしまった。
「不意打ちかよ、汚ねぇな……っ」
一瞬気持ち悪さにぐらりとしたが、何とか体勢を立て直す。
「何言ってんだよ、常識だろうが」
希望を見いだしたのか、他の奴らもわらわらと俺を囲んだ。
マズイな……。
「……もう俺に絡むなよ……。俺は引退する。喧嘩はもうしない。お前らが一番強い。それで良いだろ」
つきあい始めたときに、里美と約束したんだ。もう、危険な事はしないと。



