要らないって……別れようって言われたも同然じゃないか。

彩花を受け止めた胸に、メガネに対する怒りが沸いてきた。


「何でも良いから、話せ。じゃなきゃメガネをボコボコにするぞ」

「良いよ、もう、あんな人、嫌い……」

「嘘つくんじゃねぇ!だったらそんなに傷つくかよ!」


無理矢理彩花を胸からはがして顔を見ようとしたら、床に何かが転がり落ちた。

彩花の制服からだ。


「……なんだ、これ」

「っ!ダメっ!」


遅れた彩花の制止より先に、俺の手が、それに届いてしまった。


「これ……」


それは見覚えのあるものだった。

だけど俺が知ってるのは、壊れてボロボロになったそれだ。

しかし彩花の制服から落ちたのは、折れてもいない、綺麗な状態のそれだった。


「里美のと同じ、ピンじゃねぇか」


赤かった彩花の顔が、青くなっていく。


「どうしたんだ、これ……」

「……何でもない。たまたま一緒のを買っただけ……」


そう言う彩花の唇が震えていた。

それを見て、胸がザワリと音を立てる。

本能が言った。


「嘘だろ……」

「…………」

「里美のなんだな。多分ペアなんだろ、これと俺が拾ったものは」


彩花は黙ってうつむく。

自分の嘘が俺に伝わってしまうのをわかって、あきらめたんだろう。


「……どうしてお前が持ってるんだ?」

「……拾ったの……」

「どこで?」


そう聞くと、彩花はまた、肩を震わせて泣きはじめた。

俺は……。

聞いてはいけない事を聞いたのかもしれない。

その予感は的中した。

彩花は、消えそうな声でつぶやいた。


「……健先輩の、部屋……」


心臓が、ドクンと鳴った。

何で、そんなところに……。

だからメガネの部屋に行ったあと、様子がおかしかったのか。


「……で?」

「健先輩と、里美先輩が、どうしてそんなに仲が良いのか、聞いたら。話したくない、話さなきゃならないなら彼女なんて要らない、帰れって言われた……」

「……あんの、メガネ!!」