とにかく里美の言う通りに、急いで家に帰った。

きっと彩花と里美とメガネの間に、何かがあったんだ。

三井の言葉を思い出しそうになり、首をふる。

まさか、そんな事。

だけど、考えてみればおかしかった。

メガネの家に行く前日は、あんなに浮かれていたのに。

その後からは、全くメガネの話をしなかった。

……とにかく、本人に話を聞こう。

俺は全速力で家に帰った。


家に着くと、制服のまま彩花の部屋のドアをたたく。

走ってきたせいで、息が苦しい。


「彩花、入るぞ」


返事も聞かずに中に入ると、彩花はベッドの中で丸くなっていた。


「大丈夫か?何かあったのか?」


ベッドの脇に膝をつき、頭に話しかけると、彩花がもぞりと動いた。

布団の中から、ぐずぐずと鼻をすする音が聞こえる。


「はる、と……?」

「おう、俺だ。何泣いてんだ」

「晴人ぉ……」


相変わらず布団をかぶったまま、彩花は手だけを出してきた。

しかたなくそれを握ってやると、弱々しい力が返ってきた。


「晴人ぉ……晴人……」

「出てこいよ。虫かお前は」

「ふぎゃっ!」


片手で乱暴に布団をはいでやると、彩花が制服のまま現れた。

顔は涙と鼻水で大変な事になっている。


「どうしたんだよ…………」


その顔があまりにひどかったので、そんな言葉しか出てこなかった。


「も、もう、ダメ……」


彩花はしゃくりあげながら、何か話そうとする。

注意深く耳をすますと、小さな声で途切れ途切れに話しだした。


「た、健先輩に、中学の、昔の事聞いたら、きら、嫌われた……」

「はぁ?」

「聞かれたく、ないんだって……そんな事聞くなら、彼女なんか、私、なんか、要らないって……」

「はああぁ!?」


彩花は俺の手を握ったまま、次々に新しい涙を溢れさせた。


「全く意味がわかんねぇんだけど」

「く、詳しくは、話せないけど……。とにかくうちらは、もう、ダメみたい……」

「おい……っ」


勝手に話終えた彩花は、突然俺にしがみついてきた。