それはある日の放課後だった。
生徒会を終えてから合流するはずの里美が、なかなか現れない。
待ち合わせ場所は、ユキを拾った裏庭だった。
「長引いてんのか……?」
スマホを見ても、何も連絡はない。
しょうがねぇ。ちょっくら様子をうかがって来るかな。
そう思って、生徒会室に向かった。
既に外も校舎も、日が沈んで暗くなっている。
冬の始まりの風がピアスを揺らして、肌寒さを感じさせた。
「……?」
生徒会室の近くで、異変に気づく。
もう暗いのに、電気が付いていない。
「やべ、入れ違ったか……?」
しかし、中からちょうど、人が出てきた。
その人影は、ひょろりと長い。
「メガネ」
思わず呼んでしまうと、その人影はギロリと俺をにらんだ。
「……女の子達は全員先に帰ったよ」
「はぁ?」
スマホを見なおすが、やはり何も入っていない。
「なんで?」
「……本当にめでたいやつだな」
「……あぁ?」
メガネの声には明らかなトゲがあった。
どうしたんだ。こんな事は珍しい。
「とにかく、彩花も里美も帰ったから。事情は本人達に聞いてくれ」
いつになくイライラしたメガネはそう言うと、さっさと帰ってしまった。
「……なんだありゃ……?」
呆然としていると、手の中でスマホが鳴った。
新着メール1件。
『しばらく一人で帰ります。ごめんなさい』
それは、里美からだった。
……何で?
胸騒ぎを感じて、すぐに電話をかけた。
何回かコールして、それは繋がる。
『はい』
「おう。どうした」
『晴人くん……』
電話の向こうから悲しげな声が聞こえてきた。
胸騒ぎが、不安に変わっていく。
『ごめんね……ちょっと、一人になりたいの』
「……ちょっとって……」
『今度のお休みに、話すから。お願い、今日は……彩ちゃんのそばにいてあげて』
「はぁ?なんで彩花が出てくるんだ?」
そういえば、会ったのはメガネ一人だった。
いつも、彩花を家の前まで送ってくるのに。