家に帰ると、すぐに晴人の部屋に入った。
本人はバイトでいない。
健先輩の前では、何とか普通にしたけれど、頭に浮かんだ疑念は消えない。
私は健先輩の部屋で拾ったヘアピンを片手に、晴人の机の引き出しを開けた。
もう、捨ててしまっただろうか。
その心配は無用だった。
一番上の引き出しに、まだそれは入っていた。
「……!」
信じたくなかった。
見覚えがあったヘアピンだから、まさかと思ったのに。
そう。
晴人の机にあった、小さなビニール袋に入った、折れたヘアピン。
接着剤もくっついて、汚くなってしまっているけれど。
そのデザインは全く、私が持ってきたものと同じだった。
晴人が春に拾った、里美先輩のヘアピン……。
「なんで……」
幼なじみって、そんなに強力なものなの?
仲が良いからって、彼女がいる人の部屋に行く?
「違う……」
私と健先輩がつきあう前に落ちたのかもしれない。
もしかしたら、たくさん友達を呼んだりした日に、たまたま里美先輩がいたのかもしれない。
だけど、どんなに考えても、本人に聞かない限り、本当の事はわからない……。
胸に暗雲が立ちこめていく。
里美先輩……。
あんな素敵な人だもん。
長く一緒にいたら、好きになってもしょうがない。
だけど、過去の事なら、隠さずに言ってほしいのに……。
健先輩に聞くしかないのかな。
今までずっと避けていた、過去の事を。
ぼんやりしていたら、玄関の開く音がした。
晴人が帰ってきたんだ。
私は急いで、自分の部屋に戻った。
晴人に知られたら、泥沼だ。
本当は聞いてほしい。不安な気持ちを。
『健先輩は本当は、私より里美先輩を好きなんじゃないかな』
だけど、言えない。
それは、晴人も傷つける事だから。
どうしよう……。
何も答えは出ないまま、時間は過ぎていった。



