「……!」
「そういう事だよね?」
健先輩は、返事を聞かずに、ニヤリと悪い笑い方をした。
途端に顔が熱くなる。
私、里美先輩の事は言えない。
恥ずかしくて死にそうだ。
うつむいて、バクバクしている心臓を押さえていたら、健先輩の苦笑が聞こえた。
「……お腹空かない?もうお昼だよ」
「あ、は、はい、そうですね……」
「ピザでも取る?」
「あ、ピザ好きです」
「了解」
私を助けるように、そんな提案をした声は、いつもの通り優しくて、安心した。
だけど、少しだけ。
もっと、意地悪な健先輩も見てみたかった。
恥ずかしいけど、そう思う自分も確かにいる。
だけど、次にそれが叶う時は、健先輩に全てを捧げる時なんだろう。
部屋から出ていく健先輩を見送ると、そのまま床に突っ伏した。
「うあぁ、緊張したぁ……」
ころんと転がると、ベッドの下の隙間が見えた。
もしや、健先輩もここにえっちな本とか隠してるんだろうか。
だけど、そんなものは見えなかった。
代わりに、キラリと何かが光った。
「なんだろ……?」
思わず手を伸ばして、それをとった。
金属の冷たい感触が指に伝わる。
細長くて、針金で花の形を作ったような……。
ドクン、と心臓が鳴る。
これは、健先輩のものじゃない。
他の女の子のものだ。
よく見てみようと思って体を起こしたら、階段を昇ってくる足音が聞こえてきた。
「っ!」
私はとっさに、それをポケットに入れてしまった。
その瞬間、部屋のドアが開けられる。
「適当に頼んだよ。来るまで勉強しようか」
いつも通りに笑う健先輩。
私は、それにいつも通り笑い返した。
心臓は、変なリズムで鳴ったまま……。
私のポケットに入っているそれは、誰かの、ヘアピンだった。



