「そうでしょ?あんまり意地悪すると、他の人に逃げちゃいますよ」
「はは、それは困ったな」
負けたくなくて、意地悪しかえそうと思うのに、健先輩はまた余裕で笑う。
「……じゃあ、逃げられないようにしなくちゃね」
そう言って、史上最高に意地悪な目をした。
並んで座っていた健先輩は体の向きを変え、いきなり私にキスをした。
ぎゅっと押しつけられた唇に、息が苦しくて思わず口を開ける。
すると健先輩は、唇を離した。
片手で、私の後ろ髪をもてあそぶ。
そして、またすぐに触れられる距離で、囁いた。
「なに口開けてるの?」
「だって……」
「こうしてほしいんじゃない?」
答えなんか聞かずに、健先輩は私の唇を再びふさぐ。
さらにそれは、深く重なって……体育祭の時の、大人のキスに変わっていった。
やっと唇を解放した先輩が、耳元で囁く。
「冗談でも、逃げるとか言わない事。わかりましたか?」
「……ずるい……先輩だけ意地悪して……」
「ふうん、反抗するんだ。素直に言うこと聞けない子は、お仕置きだな」
そしてまた、私の口をふさぐ。
今度は、両手で私の体を抱きしめて。
息が苦しくて、健先輩の服をつかんでも、そんなのお構い無し。
健先輩のキスは麻薬のように、私の頭をしびれさせていく。
やがてその心地の良い侵食に、力が抜けた体を預けた。
しかし健先輩は、唇を離して意地悪に呟く。
「……これからどうしたい?」
「……え……」
「これ以上、したい?やめてほしい?」
「や、嫌、こんな明るいところじゃ」
「……了解」
しびれた頭でも、理性は残っている。今はまだ真っ昼間だ。
いくらカーテンを閉めても、明るい事に違いはない。
健先輩はゆっくりと、体を離した。
「……残念だな」
「えっ?」
「夕方には家族が帰って来るからね。またのお楽しみにとっておこうかな。……暗ければ、いいみたいだし?」



