アルバムが紛れてないかな、と本棚を眺めていたら、健先輩が帰ってきた。
「ごめん、本当に何も無くて」
お盆の上に、湯飲みとお煎餅。
何か、おばあちゃんの家みたい。
「ありがとうございます!」
冬が近づいた肌寒い部屋で、お茶のぬくもりが嬉しかった。
「はぁ……美味しい」
「そりゃ良かった」
目の前で健先輩が笑ってる。
「今日は、どうしておうちなんですか?」
「うん、彩花、先月のテストどうだった?」
「うっ……」
実は、先月末に中間試験があった。あったんだけど……。
「ボロボロでした……」
「だろうと思った。ここならゆっくり教えられるから。はい、まずは数学かな」
「ふえぇ……」
健先輩は意地悪な顔で笑う。
「いじめられたから成績が下がったなんて、悔しいだろ?」
「はい……」
こうして、甘々な二人の時間と思われた日曜は、勉強会になってしまった。
生徒会室の机より、健先輩の部屋の小さなテーブルは、二人の距離が近くて。
勉強しながらも、時々健先輩の横顔や、服からのぞく鎖骨に目が奪われてしまった。
綺麗な鎖骨……。
「ボーッとしてる」
「はっ、すみません!」
「……何見てた?」
うわ。健先輩の、意地悪目線。
しかも近い……。
「……先輩を、見てました……」
仕方なく答えると、その長い指が私の巻いた毛先をもてあそぶ。
「こんなに可愛くしてきたのに、勉強じゃ不満?」
「……か、可愛いですか?」
「先に僕の質問に答えなさい」
口だけ笑いながら、健先輩はつまんだ私の毛先にキスをする。
心臓が高鳴りはじめるけど、何と答えていいかわからない。
「……不満じゃないです」
やっと出たのは、そんな答えだった。
「そう。じゃあ」
あっさり私の髪を離し、シャープペンを握り直す。
そんな健先輩が憎らしい。
「あ、そうだ。キミの質問の答えだけど」
「はい?」
「可愛い。すごく」
健先輩は顔を上げて、余裕で笑った。



