「ごめんね、あれは中学の後輩」
「は、はぁ……」
「里美を僕の彼女だったと誤解してるみたいだな。まぁいいか。さ、また面倒な事にならないうちに、行こう」
すぐに俺様バージョンから僕バージョンに変わって、ホッとする。
ほら、と差し出された手は、変わらずに温かかった。
「今日はおうちの方々は……」
「いないよ。だから誘ったんだ。いたら何かと騒がしくなるからね」
「何かと?」
「興味津々で、質問攻めにあうよ」
健先輩は苦笑した。
そうか、家の人、居ないのか……。
少し緊張してくる。
繋いだ手がほんのりと汗ばんで来た時、健先輩の家に着いた。
結構大きな一戸建て。
誰もいないのに「お邪魔します」と言った私を、健先輩が笑った。
「こっちが僕の部屋だよ」
招かれるまま二階に上がり、健先輩の部屋に入った。
「わぁ、綺麗!」
「掃除したからね」
「でも、晴人と全然違う……」
健先輩の部屋は綺麗に片付いていて、少しも無駄なスペースが無かった。
晴人の部屋なんか、バイクの雑誌とか、CDやDVDが転がって、服が床に散乱してるのに。
健先輩の部屋は、それぞれのものがあるべき場所に、きちんと収められていた。
「ごめんね、びっくりしただろ。あの……後輩達」
「あ、あぁ……」
「もう俺様バージョン出したくないんだけどな。地元だと有名だから」
健先輩は、苦笑した。
きっと健先輩にとって、中学時代イコール暗黒時代なんだ。
「私、全然平気です。家にヤンキーがいますから!」
「はは、そうだったね。お茶持ってくるから、適当に座ってて」
指示された通り、ベッドの脇にちょこんと座った。
あ、本棚。……と言っても、ほとんど参考書や辞書。
なんか、ヤンキー時代の名残、無いかな。
健先輩、自分からは話してくれなさそうだもんなぁ。



