そんな当たり前の事に気付いた時、また里美先輩は小さな声で言った。
「あの人は、優しいから……。自分のせいで私が悪く言われたって、きっと、傷ついちゃうから……」
「里美先輩……」
「実は、これが初めてじゃないの。何回も、同じような事があったの」
その言葉に驚いて、私の涙は引っ込んでしまった。
「え……っ?」
「でも、大丈夫。大丈夫だから。慣れちゃった」
そんなわけない。
苦しくて、悔しくて、仕方ないはずだ。
「写真事件の時みたいに、私を守って晴人くんが傷つくのは、もう、嫌だから……」
里美先輩はぎゅう、と唇を噛んだ。
そして息を整えると、涙をためたまま、笑った。
「ごめんね?彩ちゃんの方が辛いのにね。内緒にしてね……お願いだから」
私はそう言った里美先輩を、晴人の代わりに抱きしめた。
なんて、強い人だろう。
晴人、あんたすごいよ。
こんなに、想われてるなんて……。
「先輩、でも……隠されてる方が、晴人はつらいと思う。あいつは自分の事より、里美先輩を守りたいんだ。自分が傷つく事なんか、何とも思ってないよ」
「それが、嫌なの……。私、晴人くんの頭のキズを思い出すたび、怖くて仕方がないの。一歩間違ったら、取り返しのつかない事になってたかもと思うと……お願い、黙ってて。どうしてもの時は、私が自分で話すから……」
とうとう涙をこぼしてしまった里美先輩の言葉に、私はうなずくしかできなかった。
苦しくて、悔しくて、悲しいけど。
ただ、これだけ晴人が大事に想われてる事が。それだけが、嬉しかった。



