スクリーンからドラマチックな音楽が聞こえたと思ったら、健先輩がうっすら目を開けた。

目の前にあるのは、主人公達の軽いラブシーン。

思いが通じあって、とうとう二人は結ばれる。


「……いいところで起きたな」


目を瞬きさせて、健先輩は小さな声で囁いた。私に頭を預けたままで。

自分がリクエストした映画にこんなシーンがあるなんて知らなかったから、何だか急に、恥ずかしくなってしまう。

私もいつか、健先輩とこういう事をするんだろうか。

晴人は里美先輩と、今まさに、しているんだろうか。

一瞬想像してしまって、胸がドクドクと鳴りはじめてしまう。

どうか、健先輩に聞こえませんように……。

そんな願いが届いたのか、健先輩は体を起こし、首をコキコキと鳴らし、スクリーンに集中しはじめた。

途端に私はホッとする。

しかし、次の瞬間。


「!」


手に温かな温度を感じてそちらを見ると、健先輩の大きな手に、私の手が包まれていた。

手のひらを合わせ、指を交互に絡められて、ブロックのように組合わさった、二人の手。

それからは、映画の内容なんて、全く頭に入って来なかった。

ただ意地悪な顔で笑う健先輩を、想像していた。

ドキドキしている私を、面白そうに見ている視線を感じたから。

私は、映画が終わるまで、意地でもそっちを向かないと決めた。