いつも黒っぽくてダボダボしてる晴人より、明るくて爽やかだ。


「そんなんじゃなくて……心配なだけです」

「心配?」

「晴人、乙女心とかわかんないから、里美先輩に嫌われたりしてないかな」

「じゃあ置いてこなきゃいいじゃないか」

「そりゃそうですけど。意外と純情なんで、きっかけがなきゃ、本当に進展しなさそうで。それも心配なの」


健先輩は声を抑えて笑った。


「そういうのを、余計なお世話と言うんだよ。でも今日どうなったかは、是非教えてほしいけどね」


そんな話をしていたら、すぐに時間が来てしまい、私達は映画館に急いだ。

事前に選んでいた映画のチケットを買って、暗い劇場の中に入る。

やはり休日だけあって混んでるけど、一応並んだ席をとれた。


「映画ってよく見ます?」

「たまにね。でも、こういうのはあまり見ないかな」


私達が選んだのは、国産の恋愛映画だった。

携帯小説を原作にした、たわいもないラブストーリー。

他には戦争モノとサスペンスとアニメくらいしか無くて、あたしのリクエストに健先輩が乗ってくれたんだ。

あまり話す暇もなく、すぐに予告編が流れはじめ、ぼんやり見ていたら、いよいよ本編に突入した。



記憶を失った主人公が幼なじみの男の子と再会したところから始まり、一緒に過ごすうちに、恋に落ちていく。

私はこの手の映画が嫌いじゃない。

主人公と一緒になってドキドキしていたら。

さら。

首もとに、何か柔らかな感触があった。

そして肩に、重みを感じる。

健先輩が座っている方からだ。


「……?」


静かに横を見ると、健先輩が、寝ていた。

私の肩に、寄りかかって。


「えぇ……」


やっぱり、つまらなかったんだ。

ちら、とのぞきこむと、本当に安らかな顔で、健先輩は規則的な寝息をたてていた。

コンタクトのまま寝ちゃうと、あとで目が痛くないかな。

そんな心配をして、起こそうかどうか迷った時だった。