晴人は私の代わりに教室に入り、その凶器のような視線で、全員をにらみつけた。
「……俺の妹に喧嘩売ったヤツは誰だ」
地鳴りのような声がして、全員が恐怖でうつむいてしまう。
「出てこれねぇのかよ、情けねぇな。……なんだこりゃ」
晴人は私の机を見て、眉間のシワを深くする。
そしてその大きな手の平で、その机を叩いた。
割れるかと思うぐらい大きな音に、また全員が身をすくませる。
「くだらねぇ事してんじゃねぇ!!今度同じ事やったヤツは、絶対見つけてボコボコにしてやる。それでも良けりゃ、いくらでもやれや」
そう言うと、身を翻して、廊下に戻ってきた。
「……晴人……」
晴人は私の方を見ずに、舌打ちして、頭をかいた。
「……ワリィな……頭悪いやり方しかできなくて……」
ぽつりと言って、その野獣はうなだれた。
私はその様子を見て、何だかとても苦しくなってしまって。
「……っ……」
涙が溢れて、右手がすがるように、晴人の制服をつかんでしまった。
「……よし、行くぞ」
うつむいていた私に、晴人の低い声が降ってくる。
顔を上げる間もなく、制服をつかんだ私の手をとり、下駄箱にむかって晴人は歩きだした。
私は抵抗もせず、その大きな背中についていった。



