自分の席。机の上に、バカ、死ね、ブス、と、ありとあらゆる悪口が、黒のペンで書かれていた。
ショックで、胸が押し潰されるような苦しさを感じた。
「…………」
呆然と立ち尽くしていると、クラスメート達が遠くから、私の反応をうかがうようにヒソヒソと話す声が聞こえた。
……誰だろう、こんな事をしたのは。
息をして椅子をひくと、そこにも罵詈雑言がはりついていた。
「おはよ、彩花……って、何これ」
遅れて教室に入ってきたヒナが、その様子を見て絶句した。
ヒソヒソ言うクラスメートの中に、美奈子ちゃんもいた。
「……アルコール借りてくるね」
ヒナに言って、教室を出て行こうと、机に背を向けた時。
「バチが当たったんじゃないの?」と、誰かの声がした。女の子の声が。
「先輩を何股もかけるから……」そんな、笑いが混じったような声も聞こえて。
ぷつん。
私の中で、何かが切れた。
「……なんなのよ……」
血液が沸騰していく。
お母さんのお腹で、晴人と分けあった血が。
「陰でコソコソ言わないでよ……」
教室の中を振り向くと、私を見ていた全員が凍りつく。
その中でも、一際青い顔をした女子のグループにむかって、声をはりあげた。
「言いたい事があるなら、ハッキリ言いなさいよ!!いくらでも答えてあげる。私は二股なんかかけてないし、自分から誘ってもない!見たような事言ってんじゃない……っ」
怒りを通り越し、悔しくて涙が出てきて、声が詰まってしまう。
その時だった。
「……その辺にしとけ」
誰かが廊下から来て、私の肩を叩いた。
その声は、自分よりはるかに低い、聞きなれた声。
「晴人……」
晴人の横には、和樹くんとヒナがいる。
ヒナがすぐに呼んできてくれたみたい。



