次の日。
重たい気持ちで、いつもより遅く家を出た。
晴人が出かけるタイミングに合わせたんだ。
「晴人、一緒に行ってもいい?」
「あぁ?気持ち悪いな……。なんかあったのか」
「別に、ないけど……」
晴人には、三井先輩と健先輩のいざこざを話してない。
説明するのもめんどくさくて、ただ黙って晴人の後ろを歩く。
晴人が居れば、意地悪な声をかけられる事はないだろう。
「なぁ、本当に何なんだよ」
「振り向かないでいいよ」
「意味わかんねぇ……」
学校が近づくと、重たかった足はますます重たくなってきた。
気分まで悪い。
健先輩とつき合う事になって、浮かれて忘れてたけど、私に敵意を持つ人が、あそこには沢山いる。
生徒会に入って、少しずつ周りと話ができるようになったと思ったところだったのにな。
ふぅ、とため息をついて下駄箱から教室に向かう私を、晴人は呆れた顔で見た。
「お前……何かあったって、態度で丸わかりだぞ」
「うるさいなぁ、なんもないってば」
「へぇへぇ。……ま、メガネが帰ってくるまでの辛抱だ」
「何ソレ……」
「俺には言えなくても、メガネには言えるだろ」
晴人はそう言って、私の頭をぽんぽん叩いた。
その目は優しくて、うっかり涙が出そうになった。
晴人。
その牙が丸くなったのは、里美先輩のおかげなの?
メガネには言えるだろ、って言うけど……言えないんだよ……。
健先輩には、可愛い彩花しか見せたくないから。
何かに怯えるカッコ悪い姿なんか、見せたくないんだ。
その大きな背中の後ろをトボトボついていったら、教室についた。
「……バイバイ……」
「……おう」
晴人を見送って、教室に入った、その時。
目を、疑った。



