「覚えてなくて良かったんじゃねえの。すげえ注目されてたし」
「そっかあ……ごめんね」
里美はまた謝ると、遠慮がちに口を開く。
「さっき……美奈子ちゃんと話してたね」
「見てたのか」
「うん」
俺は、さっき美奈子と交わした不愉快な会話の内容を、かいつまんで話した。
「やっぱり、美奈子ちゃんは晴人くんのことが好きだったんだね」
「みたいだな。お前も三井に余計なこと言うなよ」
「余計なこと?」
「だからほら……俺たちがつきあってるとかさ」
俺なりに言葉を選んだつもりだったけど、里美はしょぼんとうなだれてしまう。
「ごめんね。私だけ浮かれて」
「お前だけって……そんなことねえよ。ただ、三井から美奈子に伝わって、その……こじれそうだったから……。三井が悪いんだ、うん」
慌てて言うが、里美は顔を上げない。
「翔くんは、悪くないよ……」
「は?」
「翔くんは、美奈子ちゃんに頼まれて、仕方なく教えたんだよ。あきらめるように、言ってくれたんだよ」
「……そうだったのか」
「うん……。報告が遅れてごめんね。私が軽率だったの……」
彩花のやろうが三井が言いふらしたような事を言うから、そう信じこんでいたじゃないか。



