「晴人くん、晴人くん……」
「んっ……」
気づけば、保健室は暗くなりはじめていた。
里美の声で起こされた俺は、ぼんやりと窓の外に視線をやる。
すると、体育祭最後の、キャンプファイヤーの炎が、チラリと見えた。
里美を保健室のベッドに運んだあと、俺は付き添っていて……。
椅子に座ったまま、ベッドに突っ伏して、いつの間にか眠ってしまったようだ。
「……悪い……寝てたか。お前は大丈夫か?貧血だってよ」
「うん……。あんまり覚えてないけど……もしかして、運んでくれたの?ずっと、側にいてくれたの?」
里美が俺と向き合うように、ベッドのふちに座る。
するとちょうど、視線が同じ高さになった。
「……寝ちまったけどな」
「うそ……ごめんね、ありがとう……」
里美は顔を赤くして、困ったような目をする。
また申し訳ないと思うんだろう。
「別に……謝らないでいい」
「どうやって、運んでくれたの?」
「どうやってって……普通に、担いで」
うそ、と里美は目を丸くし、「惜しい事したな……」と、こぼした。
「何が?」
「だって、全然覚えてないんだもん……せっかく、晴人くんがだっこしてくれたのに……」
小さな声に、胸が苦しくなる。
照れ隠しに、普通にしゃべる事にした。



