「緊張してんなぁ。次、何だ?」
「あー、借り物じゃね?お題があそこに……」
「ホントだ」
何であんな目立つ競技に……
「見届けてやんなよ」
「そうだな……」
さっきのこともあるし、少し離れたところで見る事にした。
『位置について。用意』
パン、と銃声と共に選手達が走りだす。
「おっせ……」
「……なぁ」
和樹が言う通り、里美は驚異的に遅かった。
ぶっちぎりのビリだ。
他の選手が、次々にお題が書いてあるカードを開いていくのに、里美はなかなかそこにたどり着けない。
「……先輩、変じゃね……?」
確かに、変だ。
遅いだけじゃなくて、ふらついているように見える。
「あっ」
と思ったら、転んだ。しかも、なかなか立ち上がらない。
「晴人、里美先輩、ピンチだ!」
言われなくてもわかってる。
体は勝手に走りだした。
「おい!大丈夫か?」
すぐそばまで駆け寄り、膝をつく。
体育委員も異変に気づき、駆け寄ってきた。
里美は、地面を見たまま。
「気持ち悪い……」
座ったまま上半身も崩れそうになったのを、片手で支えた。



