「ああ、めんどくせえ!」
俺はそのこぶしを避け、腕をとる。
そのまま空いているほうの手で襟をつかむと、一本背負いの要領で相手を投げ飛ばした。
周りから、悲鳴が上がる。
相手はたったそれだけで、くらくらして立てないようだった。
取り巻きたちが慌てて駆け寄る。
今だ。
俺はそいつらから逃げるように、校庭を駆け抜ける。
くそ、余計な時間を食っちまった。
スマホを取り出し、電話をかける。
『もしもし?』
「和樹、彩花見なかったか?」
『えっ?見てないよ?』
「見たら教えろ」
『ちょっ、どうした……』
チッ、役に立たねぇやつだな。
俺は、生徒会室に向かった。
二度と行きたくなかったが、しょうがない。
しかし、生徒会室のドアは鍵がかかっていて、開かなかった。
誰もいないようだ。
「クソッ……!」
スマホの時計は、午後3時を指している。
あと一時間でミスコンが始まる。
「体育館か……?」
あるいは、クラス出店の方か。
「どこだよ……」
何でだろう。ここにきて、全く勘が働かない。
ただ不安だけが募っていく。
とにかく俺は、彩花のクラスに走った。



