学校を出たは良いが、まっすぐ帰ったら母親に何を言われるかわからない。
バイクでとばしたい気分だが、鍵は家の中にある。
「チッ……」
しょうがない。どっかで時間つぶすか……。
電車に乗って、バスを乗り継ぐと、海に出る。
夏に皆で行った遊園地のすぐそばだ。
嫌な事があった時、いつも何となく来てしまうのが、ここだった。
この前、美奈子を怒鳴り倒した後も、バイクでここに来た。
一応彩花の顔を立てるために美奈子に謝り、学校でも普通に話しかけてくる相手に、一応短い返事だけはするようにしている。
「何やってんだ……俺」
潮風に吹かれると、海の独特なニオイが肺を満たす。
「……どうすっかな……」
メガネに言われた事が頭をぐるぐる回る。
妹の立場を考えろ、か……。
言われた相手は気に入らないが、もっともな忠告だ。
子供だと言われて腹が立ったのも、図星をつかれたからだという事に、本当はすぐに気がついていた。
「しょうがねぇな……」
できるだけ、おとなしくするか……。
それにしても……あのメガネ、ただ者じゃない。
あれは相当の修羅場をくぐったヤツでないと出来ない顔だ。
しかも、俺と彩花が双子だと、既に知っていた。
その事を思うと気が重くなる。
彩花はどれだけ嫌がるだろう。
メガネの本性を知ったら、どれだけショックだろう。
やっぱり話せない。
そう思って、沈黙する決断をした時だった。



