その夜。
父、母、彩花がそろったテーブルで、夕食を採った後。
「あのさ」
いつもはあまりしゃべらない俺が話だし、家族全員が目を丸くした。
「その……頼みがあるんだけど」
「何よ、深刻な顔して。まさか女の子を妊娠させたとか言うんじゃないでしょうね」
「はぁ!?」
あまりに的外れな母親の意見に、彩花が爆笑する。
「ないない!こいつ絶賛片想い中なんだから!」
「何?そうなの?どんな子?可愛い?」
俺を無視した二人の会話を、父親が制する。
「やかましい。晴人の話が聞こえねぇだろうが」
その一言で、女達は静かになった。
俺に似た父親は、顔が俺の3倍怖い。
ちなみに母親は彩花と一緒で、見た目は良いが性格が悪い。
「で、何だ」
「その……猫を……飼いたい」
「猫?」
「捨て猫を拾って……公園でなつかれて……この暑さで、食欲もなくて……可哀想だから……」
ボソボソと話すと、母親と彩花が丸い目をますます丸くした。



