『……いるんだね……』


美奈子の声が、渇いて聞こえる。


目の前にこんな美人がいても、俺の頭の中を占めるのは、やはり新川先輩だった。


メガネとは幼なじみだと彩花に聞いて、あの独特の空気はそのせいか、と納得した。


でもそれで嫉妬が消えるわけじゃない。


少しは近づけたと思えば、すぐに離れていってしまう。


いつしかこの恋は、そんな儚いものに思えた。


『あぁ、彩花は知らねえけどな』


一応彩花の弁護のために嘘をついた。


『だから……彩花とは仲良くしてやってくれ』


そんな気持ち悪い事を言った俺に、美奈子は予想外の反応をした。


『当たり前だよ。って言うか……』


『なんだ?』


『好きな人がいても、あきらめる気はないから』


そう言うと、まっすぐに俺の目を見つめる。


光が宿った、黒い瞳。


その光が強すぎて、俺は思わず目をそらしてしまった。


美奈子は、明るい声で、何事もなかったように話を続ける。