『や、お前の事じゃなくて、世間一般の話な』


慌てて言い繕うと、美奈子はふふ、と笑った。


『楽しそうだけど、大変なんだね』


その後も美奈子の方からあれやこれやと話しかけてくれたので、正直ほっとした。


俺は、された質問に答えるだけで良かった。


中学の時の話とか、テストの結果の話だとか。


わりと話しやすい女だと思った。


……ただひとつの話題を除いては。


『そういえば、肝心な事を聞き忘れてたんだけど、晴人くんって彼女いるの?』


『いねぇよ』


普通に聞かれたので、普通に答えた。


すると美奈子は、俺の目をうかがうように、見上げて『じゃあ、好きな人は?』と、聞いてきた。


俺の好きな人は、忌々しい事に、さっき生徒会長とどこかに消えたよ。


そうは言えずに、黙ってしまった。