「テスト、良かったね」


そう言ったメガネの奥の目は笑っていて、私の心はたちまち軽くなった。


「はい!先輩のおかげです!」


「あはは、役に立てて良かったよ」


他人から見たら、私はしっぽを振る犬みたいなんだろうな。


じゃあ健先輩が飼い主か……。悪くないかも。


「だけど……」


うっとりしていると、健先輩は急に声のトーンを落とした。


「皆の前で僕を名指しして報告をするのはどうかな。
良く思わない人もいるかもしれないから、次回は気をつけてね」


途端に顔が熱くなる。


もっともな忠告だった。


「はい、すみません……。浮かれてて……」


そんな当然の事を指摘されるなんて……恥ずかしい。


思わずうつむいてしまうと、健先輩の優しい声が聞こえた。


「うん。二人の時は良いんだけどね。僕だけ特別扱いしてくれても」


ハッとして顔を上げると、健先輩は久しぶりに意地悪な顔をしていた。


「僕も皆の前では、彩ちゃんを特別扱いしないから。そのつもりでね」


「……はい」


「素直だね。いい子には、ごほうび」