「びっくりした……武内くんかぁ」
彼女は立ち上がり、スカートについた草を払った。
「何してんだ」
「え?えっと……」
たずねると、新川先輩は困ったようにうつむいてしまった。
すると、彼女の足元から小さな影が現れる。
「にゃあ」
その影は新川先輩の足にすりよって、甘えて鳴いた。
「猫?」
「うん……迷い猫みたい」
新川先輩はその雪のように白い子猫を、優しく抱き上げる。
「可哀想だから牛乳とかあげたら、なつかれちゃって……」
「ふぅん……」
子猫が人懐っこい目で俺を見上げてくるので、指で喉を撫でてやった。
すると子猫は気持ち良さそうに目を細める。
それを見ると、こちらの目も細くなってしまいそうだった。
「誰にも言わないでね?知られたら、追い出さなくちゃいけないから」
「はっ、悪い副会長だな」
「そうだよ?不良なの。武内くんと一緒」
子猫のおかげか、今日は不思議と自然に話ができる。
新川先輩の人をからかうような瞳が、子猫とそっくりに思えた。



