「待てよ!」
上級生の一人に、肩をつかまれた。
「……あぁ?」
視線で威嚇しただけで、やつらは少しひるんだ。
休み時間を知らせるチャイムが鳴り、生徒がちらほら教室から出はじめる。
あっという間に注目されて、相手も引くに引けなくなってしまったようだ。
「俺等が礼儀を教えてやるよ」
「まず、先輩と呼んでもらおうか」
「先輩、許してくださいってな」
……めんどくせぇ。
しかもこいつらの声には、聞き覚えがあった。
……確か、演説の日に、新川先輩にヤジを飛ばした声だ。
もしや、ずっと根に持っていたのか。
気づいてしまうと、胸がムカムカしてくるのを止められなくなった。
「……言いたい事は、それだけか?」
「あぁん?」
「吠えるしかできねぇなら、絡んでくるんじゃねぇよ」
「……テメェ!」
肩をつかんだヤツが拳を振り上げ、野次馬達が息を飲む。
だけど黙って殴られてやる義理はない。
俺は顔の前に突きつけられた、その拳をつかんだ。



