彼女が起きたのを合図にするように、他の二人も目を覚ます。


「全く。ナンシーのいびきのせいで、目が覚めたよ。


あんたも一応女なんだから、いびきをかくのやめたら?


周囲にも迷惑だし」


注意しているのか、それとも単にナンシーに皮肉を言っているのかわからないような口調で、ヨゼフは言った。


それを、更にリタが注意する。


「ヨゼフ、そうやって過剰に、年上の魔族に注意を促すもんじゃないよ。


口調次第では、生意気にもとれるよ」


リタの言葉には忠実に従い、ヨゼフは反省する。


三人はおやつを食べながら、次の目的地である≪ゲルデナの街≫の位置を確認する。


ゲルデナの街には、主に≪雷龍族≫という種族が住み、千五百年前の鎖鎌使いと呼ばれた≪雷龍戦士ハンス≫の生まれ変わりを信じて、暮らしている。


この魔界ガルドラには、雷龍族の民のように、神々の後世の存在を信じている種族がほとんどである。


それゆえ、北の領国レザンドニウムの領主キアからは、リタ達龍戦士もまた、目の敵にされている。


龍戦士狩りは、キア自身が本音でやっていることではないのか?


もし、彼の本音からではないとすれば、誰の差し金なのだろう?


リタは以前、メアリーが氷龍城の地下神殿で話してくれたことを、再度思い返す。


(おかしい……。何かが矛盾してる。


伝説では、闇龍アルエスは神に転生した龍戦士達の活躍により、封印されたはず。


せめて、アルエスが封印された場所だけでも、確実に突き止められれば良いんだけど)


リタの心に、ほんの少しの迷いが生まれる。


フィブラスだけでなく、この魔界を悪から救うのも、私達龍戦士の役目だ、とさえ彼女は思っている。


眉間に皺を寄せるリタを心配してか、ナンシーが話しかける。


「リタ、ひょっとして、メアリーが言ってたことを鵜呑みにしてるの?」


ナンシーは訪ねた。


図星を突かれたと思ったのか、リタは首を横に振って誤魔化す。


だが、ナンシーにはわかっていた。


リタは今の状況を打開する策はないのか、必死に考えている状態にある。


それを支えるのが、私とヨゼフの役目だ、とナンシーは思った。


(そうよ。リタは自分で何もかも処理できるように見えて、本当は溜め込みやすい性格なのよ。


だからこそ、ランディー陛下は、リタをよろしく頼むって言ったのよ)