「帰りたくない…」 困らせてる。 わかってる。 でもあと5分、あと5分、と一体何回心で思ったか。 「…帰ったら、メールしてやるから…今日は帰れ 冷えてきたし、風邪引くぞ」 ぶっきらぼうな言い方だけど心配してくれていることは分かる。 「うん」 卯月は優しく私の頭を撫でて、じゃあなと言った。 「バイバイ」 卯月の背中が見えなくなるまで、私は家の前で立ちすくんでいた。 まだ、夢のような気もして。 でも初めて卯月の前で我が儘を言った。 初めて、卯月に向かって『好き』を伝えた。