「あの…どうしてもやらないといけないんでしょうか」
「あたぼーよ!!! 王様の命令は絶対。はい葉山、拳をグーにして」
絶対ありえない場面に、当事者以外は愉快この上なく。
一番困っているのは間違いなく――
「あの…私棄権を・・・」
「駄目!!! 王様に服従!!!」
桜だ。
無感情の桜の目が、ほんのり潤んでいるように思えるのは気のせいだろうか。
上下関係に煩く、心底崇拝している櫂に手を上げることなど、死んでもしねえだろう桜が、櫂を殴るなんて。
きっと最初で最後だ。
「ふふふ、いいんだよ、桜。思い切り、ごつんと行ってごらん? 死んだらその時はその時。丁寧に埋葬してあげようね?」
玲も楽しそうだ。
完全ドSの顔つきだ。
櫂は何やら複雑そうな顔をして頭を数回掻きながら、
「これも"玲様"の命令だ。いいぞ、こい」
おお、櫂。
お前も意外とSだよな。
桜を追い詰めているぞ。
ああ、桜の顔が青ざめてきた。
抱えているテディベアが小刻みに震えてきた。
こんな動揺、初めてだろう。
「ほらほら、葉山!!!」
完全三日月目の遠坂が急かす。

