僕は昔から――

きっと貴方を困らせていたのだと思う。


こんな僕を、貴方はずっと見捨てずにいてくれた。


ずっとずっと温かく見守っていてくれた。


ありがとう、緋狭さん。


ありがとう、僕の心の恩師。


僕の心も肉体も、まだまだ未発達で…恐らく貴方にとってはまだまだ手のかかる子供なんだろうけれど。


それでも――


――玲。次に背広を着て私の前に現れる時は、覚悟しろよ? 意味は…判るな? 私は認めた者でなければ芹霞はやらん。


芹霞の三者面談に背広で駆け付けた際、貴方はこっそり僕にそう言って…笑った。


隠し続けてきた僕の恋心。

見抜いていた貴方は僕にそう言った。


正直僕は焦って…変な声を出しながら、誤魔化してしまったけれど。



諦めないと、忘れないと。


そう――邪恋を堪え忍んでいた僕は、本当はあの時。


貴方の言葉で…僕の罪が少しだけ軽くなった気がしました。


貴方に知られて、その想いを否定されなかったことに…僕は泣きたい心地になりました。


誰にも受け入れて貰えないと思っていたから。


唯一僕を必要としてくれた、櫂の長年の想い人を好きになるなんて…想うことすら絶対赦されない状況なのだから。