僕は桜と目配せをして、頷き合う。
「い、今…べ、ベッドを用意しているからな」
……ふう。
色に眩んだ男の顔は、同性から見れば滑稽なだけで。
今頃、甘い夢に酔い痴れて喜んでベッドの用意をしているのだろう…他の男を思えば…哀れにも思えるけれど。
病人の僕に…労(いたわ)りの心くらい持てよ!!!
まあ…こんなヤクザの、更に下々の男に説教するのも面倒だから、心で思うだけにしておくけれど。
仁流会が…大したことがないのは部下の様子でよく判る。
だとすれば、頭も…大した男ではないのだろう。
「あの…ここのご主人に…挨拶を…」
必要以上に喘いでみせたら、目の前の男の鼻息も荒くなる。
「あ、ああ。いい、俺がちゃんと言っておくから」
そこまでの展開は期待できないらしい。
そんな時、どやどやと部屋の外が騒がしくなって。
「美女と美少女だって!!?」
黒服の男達が10人程雪崩れ込んでくる。
目の前の男は舌打ちして、
「折角独り占めして楽しもうと思ってたのに、誰だ」
「おいおい、上玉すぎねえか!!?」
「どうしてあの美女…あんな悩ましげな姿勢でこっち見てるんだ?」
「はあはあ。俺…ロリ好き」
「順番守れよ!!」
馬鹿な男達だ。
盛りの付いた男子高生かって思ってしまう。
もう…溜息しか出てこない。
その時だ。
「お前は、先刻会長に連れた黒髪の女にすればいいだろう?」
僕の身体が反応した。

