玲Side
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神楽坂――
仁流会の根城がある。
明らかに尋常ではない高さに聳(そび)え立つ石壁。
其処にめりこまれた銃弾の痕。
辺りの住民は、抗争に巻き込まれるのを恐れて去ったのか…しんと静まり返っている。
物々しい重厚な黒門の前には、黒服の男が5人。
膨らんだ背広から推測するに…銃は携帯しているらしい。
警察の手が及ばぬ場所なのか。
「どうしますか、玲様。桜が切り刻みますか?」
桜の大きな目がくりくり動いた。
短髪になった桜は、僕の指示に従って…以前のようなどうみても少女の…ツインテールの付け毛をつけている。
「いや。彼らを地獄に突き落とすには…夢を見せて上げないとね」
僕はそうにっこり笑って、
「手筈通り。いいね、桜」
僕は…栗色の長髪を片手で掻き上げながら、スカートを翻して、堂々と正門の前に歩いて行った。
そして――
心臓の位置に置いた手に、力を込める。
「す、すみません……」
蹲るようにしながら、息も絶え絶えに…僕は黒服の男に声をかける。
「!!?」
それでも警戒心を解かぬ彼らに、僕は上目遣いをしながら
「持病の…心臓の発作が…。少しだけ…中て休ませていただけませんか?」
集まった男達が顔を見合わせた。

