『"仁流会"。中々大きい組織だね。恐らく櫂が買収しようとしている件と繋がっているんだろう。渡部会長の用心棒か。どうする? 全員で直接仁流会に乗り込むか?』
電話越しに聞こえる玲の声。
『ただね…仁流会は要塞のように外壁が強固で…配置されてる人員はかなりの数だ。更には"四神会"と総称される、東京の東西南北に勢力を誇る、荒くれ共が集まる暴走族も手先にしてる。人前で紫堂の力を使いにくい僕達にしたら、ちょっとうざすぎるね』
「仁流会の出入り口は1しかないのか?」
カタカタカタ、玲がキーボードを叩く音が聞こえる。
『俯瞰図…回転。ん…正門と裏門の2つだね。裏門の方が…まだ楽かな。電線は敷かれていない』
「正門の侵入者には電気かよ…」
煌がぼやいた。
「…よし。じゃあ正門は玲…桜と行け。俺達は裏門から行く」
『ふふふ。楽じゃない方を任せられるんだね? ありがとう櫂』
その声音は…"えげつない"ものに変わっていて。
『お姫様を連れ去って…ただではすまさないからね、ふふふふ』
「だけどよ、正門…玲の力で電気を止めたとしても、警備が厚い処から…白昼どう入る気だよ!?」
煌が横から携帯に向かって言うと、
『そんなの…正々堂々と入るに決まってるよ、ふふふふふ』
まあ…大丈夫だろう。
俺は少しだけ――
玲と相対する奴らを気の毒に思った。

