さっきの沈黙とは違う、

甘い雰囲気の沈黙が俺たちの周りを包む。


センパイは固まったまま動かないで、ずっと俺にしがみついている。


たまーに、イタズラ心でセンパイの耳に息を吹きかけると、いちいちビクッと反応する。


センパイの全てが、俺の心をくすぐる。



「………足りない」


センパイのあまい声が耳に届く。


「………え…?」


センパイの腕に力が籠もって、さらに強く抱きしめられる。


「…………もっと…」




恋人じゃない、俺たちの曖昧なふらふらした関係。


俺だけが、一方的に好きだと思ってたけど。


なんか、このときは、それは嘘なんじゃないかっていう、

自分勝手な錯覚に陥った。