試験返却が終わったあと、
私はすぐさま小野寺くんに駆け寄ろうとした
でも、
「あの、小野寺くんっ」
「ん?」
「あのね、この前授業中に教えてもらったとこ、
試験に出て、えっと、本当にありがとう…!」
顔を真っ赤にして
中村さんという女の子が小野寺くんに一生懸命に話しかけていた。
見るだけでわかる
中村さんは
小野寺くんが好きなんだろうね
「いいよそんな、
ってことは再試セーフってことだよな?やったじゃん」
そう言って小野寺くんは飾らない笑顔を中村さんに向ける。
そしてどこかで少し胸がチクリとした
それはきっと、私の勘違いのせいだ
少しでも、
私は小野寺くんに特別扱いされている
と思ってしまっていた自分がいたんだもの
でも違うね
凛太朗が言っていたとおりだ
小野寺くんは「いい人」なんだよ
本当に、ただそれだけで
私に対して特別な感情を持っているわけじゃなくて。
自意識過剰な自分が
バカらしくて
一人で鼻で笑う
外では暑苦しく蝉が鳴いていて
夏が始まる合図を告げていた

