「もう、……意味わかんない」
私たちはよく
嫌なことが起きたり、されたりすると
意味わかんない。
決まってそう言うのだ
そしていまもその意味わかんない状況なわけで
「やったあっ!
じゃあ待ってるねっ!
ばいばいっ」
カーディガンの袖の部分を必要以上に伸ばして、指先はまるで猫の手のよう。
あんなこと私、したことないや
嬉しくて、うさぎのようにピョンっとその場で小さく飛び跳ねることも
そんな可愛げのあること
私にはできる気がしない
「え、まじで!?
雅也、上田さんと付き合ったのかよ!?」
そんなクラスの男子の声が聞こえてきて
私は耳を塞ぎたくなった
これ以上そのことには触れないでよ
「んー、まぁ、うん」
「まじかよー!!
上田さんめちゃくちゃ可愛いよなー」
可愛い?
どこが?
あんなのただのヤリマンじゃん
メイクで盛ってるだけだし
「性格いいってまじ?」
いやいやいやいや
よくないでしょ
あの子高1の春から
今の高2の夏までで
何人と付き合って別れてきてると思ってんの?
「あーうん、いいこだよ。
素直だし、明るいし」
なにそれ
素直で可愛いって
私と正反対じゃんか
「葵、まじで大丈夫?
顔色悪いよ?」
「大丈夫じゃ、ないわ」
全然大丈夫じゃないよ
今すぐにでも
消えちゃいたい

