小野寺くんが画鋲を刺して、私が掲示物を抑える係。



そんな役割分担が出来上がっていて

すんなりと作業は進む



背伸びもする必要もなくて



でも


そばにいる小野寺くんから香る、石鹸の香りに少しだけ萌えてしまった、なんて


口が裂けても言えない。



「よっしゃ、終わり~」



最後の一枚を貼り終えると、おどけた様子で小野寺くんは言った




「あの、ほんとにありがとう」



「いいよ別に。



んー、じゃあね」



そう言って

立ち去ろうとする彼の後ろ姿を


私はただただ見ているしかなくて



決して口調が優しいわけではなかったし


飛び切りの笑顔を見せてくれたわけでもなかった


それなのに、彼のどこからか


優しさというものが溢れ出ていて


それが私の心をくすぐる。