「はよっ!」



朝っぱらから嫌になるくらいにくらいに爽やかなのは


森内 雅也。


そして、私が好きだったひと。


顔なんか見なくても


声を聞くだけで


誰かなんてわかっちゃうよ。




「あのね、今日のお昼休み

ハルナ、まあくんと一緒におべんと食べたいなーっ」




ーーーーまあくん?



いまなんつった?



まあくん?



吐きそうになるくらいに
べたべたとした甘い声が聞こえて
反射的に顔を上げた。



そして思わず


教室のドアの前に立つ、男女のカップルを睨みつける


「あ、うん

…じゃあ俺がハルナの教室まで行くよ」



なに照れてんのよ



なにそのでれでれした締まりのない顔は。



そんな顔初めて見たんだけど



神様、これはなにかの罰ゲームですか?



「葵、怖いから。そんな見ないの」



「なにあれ、うっざぁ…!!!」



「葵、抑えて、ね?」



あんな


あんなクソビッチの


どこがいいっていうのよ


バカ


雅也のバカ



騙されてるって



早く気づけ、バカ



わかってるよ



こんなの私の
負け惜しみだってこと。