とある國のヒメ


「見つからないように、山道を通っていきます。歩けますか?」

「大丈夫。山道は慣れてる。」

・・・山道に慣れてる姫なんておかしいかしら。

けれど、私は小さいころから暇を見つけては宮殿から抜け出していた。

カイとも何度か野山で遊んだ記憶がある。

「・・・そうでしたね。」

微笑むと同時に、カイは歩き出した。

道とは決して言えないような道を、草をかき分けて歩いてゆく。

少し遅れて、私もそれについて行った。



―――向かうは東。

鹿央国との国境にある小さな山村。

私とカイが頼れる唯一の場所。