とある國のヒメ


「カイが何を思っているか分かるか?

「分かんない。」

やっぱり考えても考えても分かんないよ。

カイの思い。

あのとき…カイは強くなりたいといってた。

なんで強くなりたいの。

それも分からない。

「そうか。実は俺も分からない。」

「え?」

将軍はわかってるんじゃないの?

「俺はわかっているつもりでいるだけだ。カイの本当の思いなんて俺には分からない。」

「そうなの?」

「ああ。」

「分かりたいとは思わない?」

「は?」

考えても考えても分からない。

なら知ろうとすればいい。

「ファナは知りたいよ。カイの思いを。」

分かりたい。

カイのことを。

「ふっ。はははははっ。」

急に将軍が笑いだした。

なんで笑うの?

「お前はきっといい姫になるさ。」

「姫?ファナは姫になりたくなかったよ。」

「なりたいなりたくないの問題じゃない。なれるかなれないかの問題だ。それに、お前はまだ姫じゃない。」

ファナが姫じゃない?

何も答えないでいると、将軍は話を続けた。

「お前は姫という名のついた殻のなかにいるだけだ。自分でつかんだものじゃない。いつかその殻を突き破れ。」

殻の中にいるだけ。

たしかに姫になったのは自分の力じゃない、生まれてきたときからファナは「姫」だった。

たまたま「姫」だっただけ。

「自分の力で本当の姫になれ。ファナ。」