――――…



『申し訳ありません』

『…………』




漆黒のバラに囲まれた一室に重苦しい空気が漂っていた





『…ロクサーヌ様』


ロクサーヌと呼ばれた女 は不機嫌そうに使いの者を見下ろしている


『言い訳は聞かん…

まぁ、所詮は人間。そちが手をつけんでも勝手にいなくなるだろう』


そう言ったロクサーヌは 口角を上げている



そして今しがた座っていた椅子から立ち上がり窓から覗く満月を機嫌よく見据えている


使いの者は彼女の足下で膝をついたままであった





『お前は“アレ"の側にいろ』



『御意』

瞬時に聞き受け風のように消えていった





『私を怒らすでないぞ… 』


ロクサーヌは再び椅子に腰かけ漆黒のバラを握りつぶした

その為、花弁はヒラヒラと床に落ちていき女の足により踏みつけられた