「うん。頑張れよ」

柚木君は少しだけ寂しそうに頷いた。

ドンッ。

人混みの中で、小さな私はみんなに押されて足下がおぼつかない。

ふらふらする私を見かねて、柚木君が私の手をとった。

まただ。

やっぱり守られるばかりの私。

でも、今だけ。

少しだけ。

ほんの少しだけ、甘えてもいいかな?

花火が終わったら、私は1人で歩き出すから。

きっと強くなるから。

「入試が終わったら、話したいことがある」

柚木君が言った。

柚木君の手の温もりは、変わらず温かくて、涙が止まらなくなった。

「私も」

柚木君は

「泣くなよ」

って、手をぎゅっと強く握ってくれた。