一悶着あったけど、お兄ちゃんの車に乗り込めば即発進。



「元日早々に、私たち何してるの…」



人が聞いたら呆れるよ。



「沙亜矢がバイトばかりで仕方ないだろ?」



遊園地も水族館も、私たちみたいな年になったらデートで行くもので。

もう家族で行かないものだと思ってた。

戸惑う私の手を引き、お兄ちゃんは水族館へと入って行く。

慣れた感じを見ると、ちょっと妬けてしまう。

お兄ちゃんと来た人は、幸せだなって。



「お兄ちゃん……」



「どうした?」



「今だけ、繋いでくれる?」



引っ張られてたら、私はずっと妹で。

一瞬だけでも手を繋いで、同じ歩幅で歩きたい。

お兄ちゃんは頷き、微笑みながら手を繋いでくれた。

熱帯魚や、巨大水槽に入った鮫を見て興奮。

好きな人と見ると、目に映る感動が増してる気がする。



「あのエイ、豹柄だよ!可愛いよね」



「沙亜矢、アニマル柄に興味あったか?」



「うん。動物好きだしね」



人よりも、私を受け入れてくれる気がする。

近所の魚屋さんのわんちゃんや。

お隣に住んでるおばあちゃん家の猫とか。



「そうか。次は、動物園に行けたら良いな……」



「うん?」



お兄ちゃんの声は、最後まで聞き取れなかった。