『テレビをご覧の皆様、新年明けましておめでとうございまーす!!』
元日の朝から、私はお兄ちゃんとテレビを見て居る。
母親は、父親を連れて初詣に出掛けた。
あれから顔を合わせても、特に会話をせずに居た為、テレビが救いだった。
バイトさえあれば、良いのに。
「沙亜矢」
炬燵の中で、蜜柑の皮を剥いてると、いきなり名前を呼ばれた。
お兄ちゃんを見ると、ジーンズのポケットから、“お年玉”と手書きで書かれた、分かりやすい封筒。
「……ありがとう」
毎年の恒例だけど、どうして手書きで“お年玉”。
白のシンプルな封筒なのか、謎。
…コレって……。
開けてみて、謎はすぐに解明された。
遊園地と水族館が併設されたとあるパークのチケット。
「沙亜矢、今まで行った事なかっただろ?」
「そうだけど、何で急に??」
水族館は中学の校外学習で行って、遊園地は幼稚園が最後だった気がする。
家族でなんてない。
遊園地は、先生と回ってた覚えがある。
「行くぞ」
「え?あああ、ちょっと!!」
いつの間にか私のダウンジャケットとマフラーが用意されて居て、あたふたしてるうちに、外に連れ出されていた。
お正月だからと、ちょっとはマシな格好してたけど、お洒落したなんて言えない姿。

