自身の心に深く宿る沙亜矢への想い。



「もしかして、藤森さんも沙亜矢ちゃんを……」



「どうなんでしょうか……」



言葉にされると、恐ろしいモノがあった。

他人でも、兄妹として過ごして来たから。

小さな妹が出来て嬉しかった筈が、知らないうちに女として見てたなんて。

それは、許されるのか。

隠してた筈なのに、簡単に出て来るものなのか。
 
――2人と別れ、彼女と待ち合わせた場所へと行く。

藍川原有紀ーアイカワハラユリー、25歳。

会社と提携してる商社の娘で、半年前にお見合いし、付き合う事になった。

当時は恋人なく過ごしてて、成り行きだった。

今では後悔ばかり。

価値観も違う。

沙亜矢を優先すれば、キレる。

何とも我が儘な娘。



「あら、今日はタクシーでいらしたの?」



「ちょっとした知人と会ってまして」



デートは車が基本。

こっちの都合なんて、知ったこっちゃない。

お嬢様だろうと、時々は殴り飛ばしたい。



「車を呼びますわ。レストラン予約したのに、遅れますから」



頼んでもないのに、行き先はいつも決められてる。

どこだって変わらないのに。

デート開始5分で、ため息が溢れる。

ゲーム感覚になったものの、ソフトを壊したくなる位に退屈。

沙亜矢の事もあるし、今日は早めに切り上げて帰ろう。